ひさびさに映画館で映画を見ました。
「
かもめ食堂」
小林聡美演じるサチエがヘルシンキの街角に開いた「かもめ食堂」のほほえましい日常(ある意味非日常でもありますが)を描いたなんともココロやすらぐ物語なんですが、プロモーターの悲しい性、この店が成功した理由は何か?という視点で見てしまいました。
※ほとんど公開終了しているのでアップしちゃいますが、ストーリーを知りたくない人はこのあとは読まないでくださいね。
かもめどころか、閑古鳥が鳴いているところからこの物語ははじまります。お客が来なくても食器を磨き、お店の準備をするサチエが目指すのは、おにぎりがメインの日本食のお店。
ひょんなことで店を手伝うことになった片桐ハイリ演じる「ミドリ」が、客がまったくこないこの店に対し、いろいろな提案をします。
まず提案したのが、「日本料理屋として、ガイドブックに載せてもらう」こと。確かに、一番効果が出そうな方法です。でも、サチエは、「そうすると、寿司みたいなものを期待されてしまう。私がやりたいのは、おにぎりのような素朴で毎日食べたくなるような日本のご飯なの」とその提案を拒みます。
そこで、ミドリが次に提案したのが、「具にこちらのものを使ったおにぎり」。これなら興味を持ってくれるだろうと、トナカイの肉やザリガニなどを使ったおにぎりを試作します。が、これはおいしくなくて企画倒れに終わります。
ミドリは、最初の客である日本カブレの男の子に「誰か友達を連れてこい」と迫りますが、どうやら友達はいないようで、それもうまくいきません。
…これらはいわゆるマーケットインした発想です。でも、そんな小手先がうまくいかないところがこの物語のおもしろいところ。
そんな試行錯誤を繰り返していたとき、シナモンロールを焼く臭いに釣られて、いつもは様子見で入ってこなかったおばさん三人組が入ってきます。そして、シナモンロールを「おかわり」してくれました。
…これも、販促的に見れば、「シズル感の演出」になるのですが、それが商品の本質としっかりフックされているのが、前述のにわか販促とは根本的に違います。
そんななか、ロストバゲッジしたもたいまさこ演じる「まさこ」が店に入り浸るようになったり、旦那に逃げられたおばさんを助けたりと、サチエのまわりには人が集まるようになってきます。
常連ができてくると、店も賑わいます。いつしか、店にはサチエがつくる素朴でおいしい日本のご飯を求めるお客でお店は満席になり、ハッピーエンドで映画は終わるのですが、映画を見終わって、「販促テクニックより、やっぱり、うまくいくかいかないかは“人”だよな」って改めて感じさせられました。信念を持って、でもひとりよがりにならず、背伸びしないで生きているサチエだから、まわりが協力し成功したのだと。
もちろん、出す料理がおいしかったというのもありますが、ラストシーンがサチエの心からの「いらっしゃいませ」で終わるところを見ても、それはよくわかりました。
人を欺いてまで成功しようとする人が多い中、ひさしぶりにやさしい気持ちになれた映画でした。